サウジアラムコはアジア向け「6月調整項」を引き下げた。
(ⅰ)3月下旬から4月の「中東原油のスポット価格のプレミアム低下」、(ⅱ)サプライチェーンの見直しで「中東原油に対する需要後退」、こうした原油市場の構造と秩序の変化を反映している。
【1】原油相場の構造と秩序の変化
米国とイスラエルによるイラン攻撃によって、価格形成の構造とパターンが変化した。
安定した航路と調達先を前提とした従来のサプライチェーンマネジメントは成立しなくなった。
●3月相場
中東原油の「安定供給」が崩れたことで、3月19日にかけては、中東原油の価格指標は「ブレント原油+50ドル超」のプレミアムに高騰した。オマーン原油やドバイ原油のスポット価格は「1バレル166ドル台」にハネ上げた。
しかし、3月23日を過ぎると価格形成のパターンは変化した。
中東原油のスポット価格のプレミアムは急速に縮小した。
いつまでも「米イラン戦争の終結を期待し、ホルムズ海峡の再開を待つ」では、経済活動が成り立たなくなる。アジア主要国の石油精製会社は3月下旬には、サウジアラビア西岸「ヤンブー」からの罪み出しに切り替え、さらに中東以外の「大西洋」や「北米」などの調達先に、サプライチェーン全体を見直した。
●4月相場
4月に入るとサプライチェーンの見直しが本格化し、「大西洋」や「北米」が台頭した。
中東から離れて、あらたに世界全体で「強靭なサプライチェーン」を形成することになった。
4月相場で中東原油は大幅安となり、スポット価格のプレミアムがディスカウントに転落した。
全世界にあらたな調達先、航路を求めて、到着予定日、在庫予想などを再設計して行くにつれて、3月相場で高騰した中東原油のプレミアムは剥がれ落ち、4月20日以降はディスカウントに転落した。サプライチェーンの再編が進展したことによって、原油相場の構造と秩序も大きく変化した。原油相場は「大西洋」と「北米」の原油指標がリードしており、「中東原油」はそれに対してディスカウントを広げている。
●5月相場
中東原油のスポット価格のディスカウントが続くと想定しています。
●「日本経済新聞」について
「日本経済新聞」は、中東原油の4月相場が大幅下落になったことを認識できない。5月になっても「様子見と従来依存」で、中東原油のプレミアムを想定している。「日本経済新聞」は5月2日(土)、「北海ブレントに対して3~5ド㌦ほどドバイ原油が安い状況が続ている。中東の供給制約が原油価格を押し上げている局面で、中東指標が割安という不自然な状況だ。市場関係者からは『しばらくするとドバイ原油が上昇する可能性がある』との声もあがる。」と伝えた。
【2】サウジアラムコ「2026年6月調整項」下げ
5月5日(火)通知。
アジア向け調整項
サウジ原油のアジア向け本船渡し価格(FOB)は「ドバイ原油およびオマーン原油の1カ月間の平均値」に対する「各油種の調整項」で表示される。
油種 4月積み 5月積み 6月積み 前月比
スーパーライト +4.15ドル +21.15ドル +17.15ドル -4.00ドル安
エキストラライト +3.00ドル +20.00ドル +16.00ドル -4.00ドル安
ライト +2.50ドル +19.50ドル +15.50ドル -4.00ドル安
ミディアム +0.75ドル +17.75ドル +13.75ドル -4.00ドル安
ヘビー ―0.60ドル +16.40ドル +12.40ドル -4.00ドル安
西ヨーロッパ向け調整項
サウジ原油の北西ヨーロッパ向けは「ブレント原油(ICE)」に対する調整項で表示される。
油種 4月積み 5月積み 6月積み
前月比
エキストラライト +4.45ドル +29.45ドル +27.45ドル -2.00ドル安
ライト +2.85ドル +27.85ドル +25.85ドル -2.00ドル安
ミディアム +2.05ドル +27.05ドル +25.05ドル -2.00ドル安
ヘビー ―0.35ドル +24.65ドル +22.65ドル -2.00ドル安
米国向け調整項
米国向けは「ASCI」(米メキシコ湾岸地域で取引されるマーズ、ポセイドンおよびサザン・グリーンキャニオン原油の平均値)に対する調整項で表示される。
油種 4月積み 5月積み 6月積み
前月比
エキストラライト +5.95ドル +15.95ドル +15.95ドル unch
ライト +4.60ドル +14.60ドル +14.60ドル unch
ミディアム +3.40ドル +13.40ドル +13.40ドル unch
ヘビー +2.65ドル +12.65ドル +12.65ドル unch
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