2026年2月28日、米国とイスラエルがイランを攻撃
戦争開始からわずか1週間で、中東原油のアジア向け指標(オマーン原油とドバイ原油)は「ブレント原油+10ドル」にふっ飛んだ。中東原油の「安定供給」の前提がふっ飛んだことを意味します。
ペルシャ湾~ホルムズ海峡は、アジア向けの原油供給地として知られているが、それだけではない。 LPGやガソリン、ディーゼル、ジェット燃料、バンカーオイル(船舶燃料)も供給している。さらにプラスチックや樹脂の原料となるナフサなどを生産する石油化学産業も抱えている。
「安定供給」の前提が損なわれ、インフレ圧力が昂進している
戦争は世界の資源エネルギー市場を大きく変えた。 IEA(国際エネルギー機関)加盟国は3月第3週、価格高騰を抑えるため緊急備蓄から4億バレルを放出することで合意したが、それでも国際取引の指標であるブレント原油は1バレル=100ドルを上回ったまま推移し、アジア向け中東原油は「ブレント原油+50ドル」のプレミアムに高騰している。
今回の戦争は世界石油市場の歴史で最大の「供給混乱」を生んでいる。 報道によればインドでは商業用LPGボンベが通常の2、3倍に高騰し、タイの農家はディーゼル油が不足しているという。 ジェット燃料は国際的に1バレルあたり200ドルを超えた。
世界経済は新型コロナウイルス禍やロシアのウクライナ侵攻、さらに米国による一方的な関税引き上げ、そうした危機を切り抜けつつあったが、そのとき米イラン戦争が始まった。 中東原油の「安定供給」の懸念からインフレ圧力が高まっている。
こうした情勢でぼんやりWTIを眺めていたのでは何の役にも立たない。物事は具体的に見る必要があります。本日3月23日(月)の「日報」は、わが国連休中のデータから送信します。
●アジア市況、シンガポールの石油製品
アジア太平洋地域の石油・ガスはシンガポールがハブとなり、アジア各地から集積され、域内外に輸出される。オマーン原油はガルフ・マーカンタイル取引所(GME)のマーカー価格を記載します。J=4月限、K=5月限です。
シンガポールの石油製品は、米イラン戦争による「安定供給」の懸念から、ケロシン、ガスオイルの中間留分が「1バレル200ドル」を超えて高騰。アジア市況の「ナフサ-ガソリン」も高い。
シンガポールの石油製品市況
オマーン ナフサ ガソリン ジェット燃料 ガスオイル
日付 原油 NAF-SIN GL92-SIN ケロシン 0.5% S
03/20(26) 157.94 K 133.14 145.00 212.65 219.67
03/19(26) 166.96 K 136.81 137.50 225.62 221.58
03/18(26) 153.12 K 122.47 137.60 198.86 196.09
03/17(26) 152.58 K 121.47 134.00 200.17 195.91
03/16(26) 147.79 K 123.92 139.80 199.42 188.61
03/13(26) 144.36 K
123.81 136.00 199.66 193.91
03/12(26) 134.75 K 114.58 135.30 209.83 196.85
03/11(26) 118.73 K 102.92 112.00 157.12 163.20
03/10(26) 114.85 K 97.67 113.00 142.92 160.20
03/09(26) 124.68 K 114.14 130.00 185.64 183.89
03/06(26) 100.31 K 89.36 113.20 155.82
154.19
03/05(26) 94.47 K 87.69 106.10 194.60 140.98
03/04(26) 85.93 K 87.25 99.00 225.44
126.96
03/03(26) 82.09 K 82.58 95.50 131.02 117.51
03/02(26) 80.40 K 79.47 90.30 117.51 112.16
. 2/28 米国とイスラエルがイランを攻撃し、ハメネイ師を殺害。
02/27(26) 70.36 J 69.72 79.30
93.45 91.39
02/26(26) 70.05 J 69.19 79.25
92.66 91.69
02/25(26) 70.06 J 67.39 78.95
92.67 91.40
02/24(26) 70.42 J 67.14 78.85
92.74 91.90
02/23(26) 69.96 J 67.22 77.40
91.81 91.13
要点
(ⅰ)「日本経済新聞」などわが国の報道機関(いわゆるオールド・メディア)は「WTI=国際指標」という信仰が根強く、そうしたWTI偏重に反省もない。このため千年1日の如く、20年前と同じ世界観で「WTI 100ドル」をめぐる価格予想に夢中になる。しかし、WTIは米国オクラホマ州クッシングが受渡地点です。現下の中東の「安定供給」の指標になるものではない。戦争開始から3週間も経ってそれがわからないようではオールド・メディアの劣化も相当深刻です。
(ⅱ)安定供給とは、たとえば水道のハンドルを回せば水が出るように、ガス栓をヒネればガスが出るように、すべての企業活動の前提になるものです。現在の相場は値段が高いとか安いとかの一般的な需給ではなく、「安定供給」が焦点になっていることに注意が必要です。
(ⅲ)安定供給が損なわれるとすべての領域で影響が連鎖し、文字通り「大変な」相場になる。そのとき小さな個人投資家が目先の高安に目を奪われていると「場違い」の思惑になります。
(ⅳ)これらについて、当社「日報」ですべてお伝えすることはむずかしい。できないことがあります。
●国際原油取引の指標
国際原油取引の指標はICEブレント原油です。
中東原油の安定供給が損なわれているため、中東原油はブレント原油に対し過去に例のないプレミアムを形成しています。
本日3月23日(月)の要点
ICEブレント原油2026年5月限 週末終値109.55ドル、
本日23日(月)は110ドル以上で推移するか?
ICEブレント原油2026年6月限 週末終値104.41ドル、
本日23日(月)は105ドル以上で推移するか?
ICEブレント原油先物 2026年3月23日(月)
限月 始値 高値
安値 帳入値 終値
05月限 2026 113.76 ※110ドル以上
06月限 2026 107.50 ※105ドル以上
07月限 2026 101.36
08月限 2026 96.89
09月限 2026 93.21
10月限 2026 89.96
11月限 2026 88.01
12月限 2026 86.50
ICEブレント原油先物 2026年3月20日(金)
限月 始値 高値 安値 帳入値 終値 前日比
05月限 2026 107.17 113.11 105.05 112.19 109.55 +1.96
06月限 2026 102.60 107.37 100.47 106.41 104.41 +1.34
07月限 2026 97.25 101.30 95.24
100.33 98.48 +0.44
08月限 2026 92.35 96.28 90.84 95.37 93.81 +0.48
09月限 2026 89.17 92.79 87.89 91.86 90.00 -0.06
10月限 2026 86.74 90.03 85.62 89.17 87.18 -0.75
11月限 2026 85.14 88.02 84.02 87.29 85.15 -0.97
12月限 2026 83.72 86.47 82.81 85.87 84.42 +0.02
ICEブレント原油先物 2026年3月19日(木)
限月 始値 高値 安値 帳入値 終値 前日比
05月限 2026 109.78 119.13 103.76 108.65 107.59 -2.06
06月限 2026 105.17 112.13 99.51
103.78 103.07 -1.99
07月限 2026 100.27 104.69 94.97 98.46 98.04 -2.02
08月限 2026 96.34 98.91 91.02 94.05 93.33 -2.45
09月限 2026 92.50 94.63 88.17 90.89 90.06 -2.36
10月限 2026 89.95 91.46 85.90 88.39 87.93 -1.70
11月限 2026 87.87 89.23 84.28 86.57 86.12 -1.49
12月限 2026 87.51 87.51 83.01 85.18 84.40 -1.66
ICEブレント原油先物 2026年3月18日(水)
限月 始値 高値 安値 帳入値 終値 前日比
05月限 2026 103.66 111.90 100.34 107.38 109.65 +6.15
06月限 2026 99.55 106.96 96.70
102.92 105.06 +5.51
07月限 2026 95.15 101.60 92.59 98.16 100.06 +4.95
08月限 2026 91.42 96.83 89.12 94.01 95.78 +4.43
09月限 2026 88.53 93.09 86.43 90.76 92.42 +3.98
10月限 2026 86.17 90.10 84.29 88.19 89.63 +3.46
11月限 2026 84.41 87.86 82.70 86.26 87.61 +3.30
12月限 2026 82.83 86.20 81.37 84.74 86.06 +3.25
●GMEオマーン原油2026年5月限「マーカープライス」
ガルフ・マーカンタイル取引所(GME)オマーン原油の基準は、東京時間午後5時30分のマーカープライスです。サウジ原油のアジア向け輸出価格(本船渡し条件)の構成要素の一つ。
GMEオマーン原油1番限=「ブレント原油2026年5月限+50ドル」の水準です。
ブラッツドバイ原油1番限2026年3月限もまた基本的に同じです。
日付 GMEオマーン原油 マーカープライス
3/23(月)2026
3/20(金)2026 157.94ドル (ブレント5月限 +50.32ドル)
3/19(木)2026 166.96ドル
(ブレント5月限 +52.60ドル)
3/18(水)2026 153.12ドル
(ブレント5月限 +50.37ドル)
3/17(火)2026 152.58ドル
(ブレント5月限 +48.61ドル)
3/16(月)2026 147.79ドル
(ブレント5月限 +42.22ドル)
3/13(金)2026 144.36ドル (ブレント5月限 +42.74ドル)
3/12(木)2026
134.75ドル (ブレント5月限 +37.05ドル)
3/11(水)2026 118.73ドル
(ブレント5月限 +28.96ドル)
3/10(火)2026 114.85ドル
(ブレント5月限 +23.66ドル)
3/09(月)2026 124.68ドル
(ブレント5月限 +17.31ドル)
3/06(金)2026 100.31ドル (ブレント5月限 +14.53ドル)
3/05(木)2026 94.47ドル
(ブレント5月限 +10.43ドル)●安定供給に懸念
3/04(水)2026 85.93ドル
(ブレント5月限 + 1.84ドル)
3/03(火)2026 82.09ドル
(ブレント5月限 + 1.32ドル)
3/02(月)2026 80.40ドル
(ブレント5月限 + 0.55ドル)
ICEブレント原油とGMEオマーン原油の価格差
2026年3月20日(金)東京時間午後5時30分の価格
3月20日(木) 5月限
6月限 7月限 8月限
ブレント原油 107.62 103.64 98.36 93.81
オマーン原油 157.94 153.07 147.75 143.34
価格差 +50.32 +49.43 +49.39 +49.53
●プラッツドバイ原油
プラッツドバイ原油1番限(2026年3月限)は、1カ月間の平均値。
米イラン戦争が長期化するとき、あるいは、ホルムズ海域の原油積取の停止が長期化するとき、
中東原油の「安定供給」が長期にわたって損なわれる場合、1番限の「ブレント原油+50ドル」のプレミアムは、2番限に波及する可能性があります。
CMEプラッツドバイ原油
日付 3月限 4月限 5月限 6月限 7月限 8月限
3/23(月)2026
3/20(金)2026 134.068 112.835 100.221 95.665 92.656 90.278
3/19(木)2026 137.822 108.650 96.458 93.349 91.017 88.909
3/18(水)2026 136.421 107.284 97.693 93.535 90.847 88.623
3/17(火)2026 122.841 103.499 94.669 91.190 88.552 86.465
3/16(月)2026 129.895 102.448 92.755 88.904 86.610 84.586
3/13(金)2026 127.861 103.871 95.669 92.059 89.820 87.365
3/12(木)2026 123.055 100.348 93.125 89.951 87.473 85.297
3/11(水)2026 113.548 89.358 85.170 83.831 82.112 80.708
3/10(火)2026 105.134 84.557 80.918 79.567 78.275 77.022
3/09(月)2026 107.550 93.603 88.364 86.298 84.157 82.168
3/06(金)2026 99.142 86.965 82.770 80.087 78.302 76.913
3/05(木)2026 89.312 79.390 76.379 74.732 73.781 72.970
3/04(水)2026 81.115 73.736 72.387 71.516 70.977 70.334
3/03(火)2026 80.391 75.001 73.580 72.554 71.746 70.845
3/02(月)2026 76.533 73.711 72.752 71.931 71.199 70.492
●大型タンカー(VLCC)スポット運賃市況
原油タンカー(VLCC)のスポット運賃が高値に舞い上がっており、わが国の調達業務もむずかしい情勢です。
「ペルシャ湾(ラスタヌラ)積み―中国」のワールドスケール(WS)
出所:海事プレス
ONLINE
03/16-03/20週平均値
03/09-03/13週平均値 436.53
03/02-03/06週平均値 455.76
02/23-02/27週平均値 209.47
02/16-02/20週平均値 156.35
02/09-02/13週平均値 135.96
02/02-02/06週平均値 139.09
01/26-01/30週平均値 103.70
01/19-01/23週平均値 123.95
01/12-01/16週平均値 103.19
01/05-01/09週平均値 61.58
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現在の相場は、中東の資源エネルギーの「安定供給」が焦点です。
水道のハンドルを回せば水が出るように、ガス栓をヒネればガスが出るように、安定供給はすべての企業活動の前提です。